
「美容部員」と聞くと、華やかな制服、きれいな売り場、美意識の高い女性たち—。
そんなイメージを思い浮かべる方も多いかもしれません。
私は国内大手メーカーの美容部員として約13年間、その世界のど真ん中で働いてきました。
お客様に感謝される喜び。
「あなたに選んでもらえて良かった」と言われる瞬間。
この仕事にしかない確かなやりがいがありました。
それでも私は、この仕事を離れる選択をしました。
理由は一つではありません。
これから美容部員を目指す方。
今まさに悩みながら働いている方。
そして、少しだけ裏側を覗いてみたい方に向けて。
今回は、
◆現役時代には書けなかったこと
◆退職した今だからこそ見えた美容部員の「本音と現実」
を、一歩引いた視点でお伝えします。
美容部員の仕事
美容部員の業務内容は、メーカーや配属先が違っても大きくは変わりません。
・お客さまへのカウンセリング
・スキンケアやメイクの提案、販売
・メイクのレッスンやタッチアップ
・簡易的なフェイシャルエステ
・売上管理や数字の報告 など
一言で言えば「人の悩みを聞き、どのような手段で解決するかを提案する仕事」です。
現役時代、やりがいを感じる瞬間は沢山ありました。
「肌が変わった」
「周りに褒められた」
「メイクが上手く出来るようになった」
そんな言葉をいただくたびに、この仕事を選んで良かったと思えたのも事実です。
でも同時に、忙しさやプレッシャーに追われる日々の中で「この働き方をいつまで続けられるのだろう」という不安も少しずつ積み重なっていきました。
私が美容部員を辞めた理由

美容部員の存在価値が分からなくなった
令和になり、これまで以上にSNSが普及し、誰でも簡単に成分や口コミを調べられる時代になりました。
お客さま自身が情報を集め、比較し、判断し「自分でコスメを選べる」環境が整っています。
そんな中で「知識を伝えるだけの美容部員」の存在価値に、だんだんと疑問を感じるようになりました。
もちろん、私たち美容部員を頼りにしてくださるお客様もいるのですが、
「美容部員よりもインフルエンサーの情報が最優先」という方が多いのも事実。
ただ商品をお渡しするだけ。
という流れ作業のような日もありました。
知識、情熱、サービスを売りにやってきたベテラン勢は淘汰されていくのです。
見合わない給与体制
ネットでコスメが気軽に買える時代。
当然、現場では売り上げに苦しむ日も多くなってきます。
これに対しての救済措置はほとんどなく「現場任せ」のメーカーが多いように思います。
その中で、
・目標額は年々上がっていく
・販売ノルマも増えていく
・サービスを必要としないお客さまが増えていても「タッチアップやフェイシャルエステの活動目標は変わらない」
というような自分一人の力ではどうにもできない矛盾が生じてくるのです。
目標や査定の基準が達成できない。
今まで以上にしんどい思いをしているのにも関わらず、給与は横ばい・もしくは下がっていく一方。
努力しても報われにくい構造は、長く働くほど違和感として積み重なっていきました。
家族との時間のなさ
これが私にとって退社することになった一番の理由です。
美容部員は、日・祝・大型連休・年末年始など「世間の休み」は基本的に出勤。
もちろん店舗によって様々ですが、私は約12年の中で半分以上「12/31も1/1も出勤」という状況でした。
そして2人目の育休明けには時短制度を活用して復帰しましたが、それでも帰宅は18時過ぎ。
保育園のお迎えもままならない日々でした。
さらに、その時短制度が大きく改正される日がくるのです。
月の1/3は「遅番勤務が義務付けられる」というもの。
要するに
・19時または20時間までのラストまで勤務すること
・フルタイム勤務のスタッフと平等にすること
・この条件が満たされない場合はパートタイム扱いになること
という内容でした。
これには全社員驚きを隠せず、かなりざわつきました。
「一体何のための時短制度?」
「私たちも独身時代は支えてきたのに?」
「もはや時短勤務者は辞めろということ?」
の声でいっぱい。当然ですよね。
私も色んな人に訴えてみましたが、なすすべなし。
この制度改悪が私にとって大きなターニングポイントになったのです。
「働く女性の味方」という言葉と現場とのギャップに、強い違和感を抱きました。
そして、子供との時間を優先したい。もっと傍にいてあげたい。
改めてそう思い直しました。
それでもこの仕事が教えてくれたこと
美容部員という仕事を離れた今、それでも「やって良かった」と思える事があります。
商品知識やメイク技術以上に、
■人と向き合う力を身につけられたこと
■目線や所作で、気持ちを汲み取る力が得られたこと
というところです。
お客さまは必ずしも、自分の悩みを言葉にできる状態で来店されるわけではありません。
・何となく調子が悪い
・しっくり来ていない
・理由は分からないけれど違和感がある
その小さなサインは、表情・目線・仕草・声のトーンに現れます。
「言葉になる前の感情を感じ取ること」
それは、現場でしか身につかない力でした。
気持ちを「言語化してあげる」仕事
多くのお客さまは
「何が嫌なのか」
「何を変えたいのか」
というのを、うまく言葉にできません。
その曖昧な違和感を整理し「つまり、こういうことですよね」と言葉にしてあげる。
この翻訳作業こそが、美容部員の本質的な役割だったのだと思います。
退職して分かった美容部員という仕事の本質。
美容部員は、単に商品を売るだけの仕事ではありません。
悩みを汲み取り、選択肢を整理し、その人に合った答えを一緒に探す仕事。
ただ、その価値を十分に発揮できる環境が年々少なくなっているのも事実。
続けることも、離れることも、どちらが正解ということはありません。
これから美容部員を目指す方・悩んでいる方へ。
もし今「辞めたい」と思っているなら、それは弱さではなく自分の人生を真剣に考えている証拠です。
そして「続けたい」と思うなら、あなたにしかできない接客スタイルを大切にしてほしいと思います。
美容部員という仕事は厳しさもあるけど、誰かの人生に寄り添える仕事でもあります。
これから目指したいという方は
・人にサービスし、喜んでもらうことが好きか
・常に最新の情報がアップデート出来るか
・自分のライフスタイルに合った働き方が出来るのか
というところを、よく考えてみてくださいね。
この記事が少しでもあなたの助けになれたら嬉しいです。



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